『電子自治体』〜2003年ネット革命で役所が消える 
 井熊均(日本総合研究所)著,日刊工業新聞社発行 2000/06 評者 佐藤健    


 政府は11月6日、「IT基本戦略草案」をまとめたが、その中で、日本のネット人口普及率を60%にする、とされている。
 しかし、肝心の「なぜ、ネット人口普及率を増やさなければならないか」や、「ネット人口普及率をあげるための具体的手段何か」が見えてこない。

そこで、この本だ。
本書は、崖っぷちに立たされた公共財政が、2001年に「公共ネット革命」を進める決断をするという仮定に基づいている。本書は、3章構成である。

第1章では、自治体財政が窮地に追い込まれネット革命を導入するまでの流れを描く。
第2章では、ネット革命により生まれる「電子自治体」のイメージを描く。著者は、何でも自前でそろえてしまう役所の体質に警鐘を鳴らす。ネットを第二の公共事業にするな、公共は民間の進んだネットインフラを使え、と。私はこの著者の意見に賛成だ。競争力のない、役人を天下らせるだけの財団法人が 公共ネットインフラを作っても役に立たず、無駄遣いになるだけだ。
本書の最終章である第3章「現れる公共ネット市場」が本書の神髄だ。ネット革命によって、行政の役割の変化、組織の変化のあり方について触れている。ただ、やや理想論を述べているに止まり、阻害要因や、その克服方法などについて触れてほしいと感じた。


本書を紹介し終わったところで、最初の問いに答えよう。
「なぜ、ネット人口普及率を増やさなければならないか」といえば、国民(住民)がネットを使い、行政手続きを行うことで窓口業務が激減し、行政の効率化が進み、経費が節減できるからだ。金のない行政にとって魅力的だ。「ネット人口普及率をあげるための具体的手段何か」と聞かれれば、ネットで手続きをすることがすごく便利だからネットをやってみよう、ネットがないと不便だな、と思わせる事だ。ネットは、国民から見ても魅力的だ。地味な本だが、役人が「電子政府」を構想するに当たって是非読んでいただきたい1冊である。