| どこかの麦畑を歩いていると、ふと、一陣の風が吹き、傍らにあった麦が束になり、小さな女性の姿をとった。
その小さな女の子は身長が30cmぐらいしかなく、私が「麦の精霊か?」と訝しげに思ってみていると、その視線に気づいたのか、少し驚きながらも少女は私に話し掛けてきた。
「あら、私の姿が見えるのね。でも、人間も元を辿れば調和を司る精霊なんですもの、私たちが見えることもあるのでしょうね。
しかし、なぜ人は精霊である事をやめ、肉の体を持つようになったのかその原因は知らないでしょう?」
そういうと精霊は堕ちたる精霊人間について語り始めた。
麦の精霊の話によると調和の精霊とは、自然のバランスなどを司っており、全てのものに平等に接しなければならなかったのだという。植物の量、それを食べる草食動物の数、その肉を食べる肉食動物の数、全てのバランスを保つ役割をになっていたのだという。
そのバランスが崩れ爆発的に一種の生物が増えた場合などは他の精霊の力を使い天災を起こしその数を減らすこともできたという。
いわば生物の生殺与奪を担っていたのだ。故に全てのものを平等に扱う必要があったのだ。と・・・。
が、イルとメルという2人の精霊は恋という相手を特別視することを覚えてしまった。
全てのものを平等に扱わなくてはならない調和の精霊が相手を特別視することを覚えてしまったために2人は堕ちて人間になったのだという。
だが、堕ちたとはいえその生殺与奪の力は失われておらず、精霊を使うことは出来なくなったが、道具や他の動物を使うことは今も変わらずできるのだと。
そして、少女は別れ際に一言私に「あなた方は個人では弱い、周りに私たち精霊や、動物などがいたからの生殺与奪の力です。
あまり過信しすぎて滅びの道を歩まないように」と告げると、
現れたときと同じように風が吹き、少女の姿は1束の麦となった。
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