スケッチ_3『自主訓練』
「これで、終わり、だぁっ!」
スハルの一撃でトドメを刺されたドラゴンが、断末魔の呻きを上げてその巨躯を地に沈める。
荒い息が響く石室の中で、その姿は奇妙に捻れ、揺らめき、そして消えていった。
「はー、つっかれたー!」
壁からの光が消えた途端、パーティ一同は大息を吐いて床に座り込んだ。そのままごろりと床に寝ころんだスハルは、けれど手応えありといった笑みを浮かべて手の内の槍を握る。城の地下1階に作られた修行場で、新しい装備の使い心地を見がてらの挑戦だった。
「やっぱ、4連戦はまだキツイかー」
「だねー。これ実戦だったら、そろそろアタシ達生きてないよね」
「だろうな」
「つうかー、前の二人は無茶しすぎ。回復も補助も、本当ギリギリだったんだからな?」
「悪ィ悪ィ。でもさ、こいつの使い心地はかなりいい感じだ。だいぶ馴染んできたし、もう実戦でも大丈夫かな」
「喜んじゃってまぁ。まあさ、久しぶりに買い換えたんだし、練習位はカンベンしてあげようか、リウ」
「いいよ。俺だって、解ってて言ったんだからさ」
マリカにそう笑って肩を竦めたリウは、今の幻影を作り出していた壁の設(しつら)えを改めて見やった。
「それにしても、頭では幻だって解ってるのに。凄いよなー。相変わらず」
「帝国の魔導に関する知識の、ひとつの完成形じゃからな」
リウの言葉に、満足気にヌザートが頷いた。
装置から投影された幻像は、打たれれば傷さえ負う程に完全に五感を欺く。それでいてそれだけの魔力をこの石室に押し留めておけるという緻密な制御能力は、魔導帝国の名に恥じぬ出来映えだった。
「なぁ、ああいうのって他の形でもできるのか?」
ひょいと起き上がったスハルが、老魔導師に問いかける。
「というと?」
「例えば…あ、そうだ、俺対俺とか」
「数価が足りんからな。すぐには無理じゃ」
「それって、すぐじゃなければできるかもしれないって事か?」
興味と興奮に満ちた声と表情に、他の三人はやれやれといった風情で苦笑を交わす。
「可能か不可能かと問われれば、可能じゃ。だが例え数価の回収が一日でできたとて、お前さん相手じゃ無駄じゃろうな」
「えー? なんでそう言い切れんだよ?」
「知れた事」
自明とばかりに片眉を上げ、ヌザートが鼻で笑う。
「昨日のお主より今日のお主の方が、確実に強くなっているじゃろうが。昔の自分と戦って何になる。だから、無駄だと言うたのじゃ」
「なるほど…そりゃそうか」
「第一、あれはわしが一度戦ってみないと必要な数価がとれんでな」
「そうなんだー……え?」
納得の和みが、不意に沈黙に浚われる。四対の視線が、探るように部屋の主へ向かった。
「…まさか」
「アレ全部と戦った事が、あるのか?」
「さぁて、のう?」
曖昧な答えと共に老魔導師が浮かべた謎めいた笑みに、四人は嘘寒いものを感じつつ、顔を見合わせたのだった。
雑景その3。
vs自分って格ゲーかいと。因みに、数価=データって事で。
スケッチ、今のところなにげにリウが皆勤賞だ。
つうか、気が付けば施設話ばかり…
カプ系に曲がらない話のベクトルに、なんだか敗北感です。トホホ。
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