スケッチ_2
『サンドイッチ』

「こんばんはー」
「おう」
 ワスタムがほぼ1人で切り盛りしている厨房は、いつもいい匂いと炎の暖かさが絶えない。フライパンを片手で煽りながら、厨房の主は声をかけてきたマリカと傍に立つリン=レインの姿を見ると、テーブルに向けて顎を振った。
「頼まれてるもの、できてるぜ」
「ありがとうございます」
「そこにある水差しも、一緒に持っていってくれ。横の林檎の煮たのを溶かして飲むといいって言っとけ」
「うん、ありがとう」
 器と皿の乗った盆を取り上げるマリカと水差しを手にしたリン=レインの二人は、階段を上がって左の部屋へ向かう。
 部屋の奥には、小ぶりの円卓に額を寄せている三人の姿があった。バンダナで抑えた収まりの悪い髪、いかにも学者然とした緩やかな帽子、機能的に切り揃えられた短い髪。この部屋ではおなじみの面子だった。
「こんばんは」
 聞かせる為に僅かに強めた声。それに気付いてひょいと顔を上げたのは、リウだった。続いて他の二人も、揃って来客に顔を向ける。
「ご飯だよ」
「あれ、もうそんな時間だっけ?」
「もう皆は終わってるよ。まったく…その分じゃ、お腹すいてるのも忘れてたでしょ」
「あー、うん。そうかも」
「一食程度抜いたとて、通常の活動に支障は生じないが」
「そういう問題じゃないんですってば。相変わらずだなぁ、ルオ=タウさんは」
 もはや種族的というよりは個人的なものだろうルオ=タウの度を越えた合理的発言に苦笑しつつ、マリカは机の邪魔にならない位置に盆を置いた。控えめな音を立てて、その横にリン=レインが水差しを置く。
「これ、ワスタムさん作のサンドイッチ。これなら、話しながらでも大丈夫でしょ?」
「わ、気が利くー。ありがとう、マリカ」
「どういたしまして。ここのメンバーはいっつも夜に食堂に来ないって、心配してたよ?」
「あちゃー。気遣ってくれてたんだ。皿返しに行った時にでも、謝っとくよ」
「しかし流石に、食べ物を目の前にすると空腹感を思い出しますね」
「だね」
 自然と手を胃の辺りにやるムバルとリウを見て、己も手を置いてみて不思議そうに首を傾げたルオ=タウに、リン=レインがくすりと笑う。
「その水差し、多分中身は紅茶だと思うけど。横のを溶かして飲むといいって」
「わかった、ありがとう」
「それじゃあ、続きをどうぞ。あたし達もご飯にしようよ、リン=レインさん」
「はい。それじゃあ」
「ありがとう、二人とも」
「どういたしまして」
 二人が部屋を出るのと三人の手が皿に伸びたのは、ほぼ同時の出来事だった。

 

 雑景その2。
 ここにマナリルでもいれば、「お守り攻撃」なんぞを持つムバルも保護者モードを発動させて食事はきちんと摂りそうなんだけど、この面子では研究馬鹿が炸裂だろうなと。
 そしてマリカとリン=レインはこの後食堂でリウ@シトロ時代の話で盛り上がるといい。
 マリカがいろいろと暴露してやるといい(w)

 なんとなくだけど、リウにはサンドイッチが似合う。
 行儀悪いとか言われつつも、ながら食い。
 戦う天機星はマジで多忙だと思う。

 



モドル