スケッチ_1
『えれべーた』

「悪ぃ、遅れた!」
 ばたばたと聞き慣れた足音を引き連れて、広間にスハルが駆け込んでくる。広間に持ち込んだ卓を囲む会議の面子から咎める空気はなく、代わりに苦笑がその場の空気をさざめかせた。
「スハル…お前また『えれべーた』使わなかっただろ?」
 眉をハの時に寄せたリウが、呆れを隠さぬ声で言う。1階から一気に階段を駆け上がってきたらしいスハルの肩は、大息で荒く上下していた。
「え? あ…まあ、うん」
「んじゃ、席に着く前に何処で道草食ってたか、キリキリ白状するように」
「えー? …わかったよ」
 深呼吸し、記憶を確認するように指を折りながら、スハルが口を開く。
「えーっと、とりあえず入口で逢ったガドベルクのおっさんが運んでた鋼の材料を工房まで運ぶの手伝って、そんで2階上がったらワスタムのおっさんに厨房まで水汲むの手伝ってほしいって言われたから、井戸からえれべーたで2回ほど水運んで…あと、今度出掛けるときに買ってきてほしい物聞いて…どうした?」
 一通り話し終えるところで、大きなリウの溜息にスハルはきょとんとした顔をする。
「お前さぁ、なんで…」
「え?」
「なんで水汲むのにえれべーた使ってて、それで上まで上がってこようとしないわけ?」
 手首の骨をこめかみにごりごり押し当て、ったくもーとリウは唸りにも似た声を漏らす。
「いや、だって…えれべーたはさ、確かに面白いんだけど、なんかこうさ、ズルしてるみたいな気がしてなんないんだよな。そりゃ、すげー急いでる時とかは断然いいんだけど」
「スハル君。ボクとしてはね、会議にも急いで来てほしいと思ってるワケなんですが」
「うっ…や、だから悪いって…」
「リウよ、そのくらいにしておいてやれ」
 ダイアルフが窘めるように言った卓の周囲からは、この一幕に耐えられなくなったらしき笑い声が漏れ始めていた。何人かは顔を伏せ、こみ上げる物をを抑えるように肩を震わせている。
「ちぇ。王様はスハルに本当甘いもんなー。なんか俺の方が悪者みたくない?」
「リウ殿がいるから、スハル殿も安心しているのだろう。頼られていると思えば、そう悪い気もしないだろう?」
「クロデキルドさんまで〜」
「そうそう、頼りにしてるから」
「お前が調子に乗るなっての」
 尖らせた唇で大げさに溜息をつくと、リウは話題を切り替えるように声を改める。
「あーもう、いいよ。それじゃあ、確認がてら今まで話した事もう一度話すから。ちゃっと座って」
「おう。ええっと、今度から気を付けるよ」
「…期待せずに、待ってるよ」
 肩を落としてのリウの返事に、遂に誰かが吹き出した声が聞こえた。

 

 日々の雑景を、ちまっと書き出してみました。
 コネタがあまり得意でないので、習作と思っていただければ幸い。
 ラクガキのような物と思ってください。

 えれべーた、主人公は何処かこんな風に捉えてるんじゃないかなと。
 「自分はいいけど〜」みたいな科白を口にしてたし、何か便利なオモチャ扱いというか。結局階段使ってるじゃねーかオマエと。
 多分今後急ぎの際は、モアナにえれべーた使うように伝言するんじゃないかと思います。



モドル