今日の天気は雨だった。オレと勉強バカの友人「やすお」は、雨に濡れるのもどうかと思い、オレの自宅でゲームをすることにした。二人で参加できるものがよいということになり、野球ゲームで盛り上がることにしたのだった。
 
 
オレ :「それはそうとさ、おまえ野球ゲーム大丈夫か?ルール知ってるか?」
やすお:「ああ。問題なしだ。ボクは完璧な男だからな。」
オレ :「でも、おまえ勉強一筋じゃん。野球したこととか見たことあるの?」
やすお:「ははは、当然だ。ボクの教科書には
”無知”という言葉はないのだ。」
オレ :「ナポレオンみたいなフレーズ言うなよ。余計に怪しく感じるぞ。」
やすお:「そんなことより、早く始めてくれ。」
オレ :「いいよ、それじゃあチームを決めようか。おまえから決めていいよ。」
やすお:「よし、ボクはこのYGマークにするぞ。ニュースからして、このチームは毎年優勝候補だからね。」
オレ :「ほー、よく知ってるな。一番強いチーム選びやがって。」
やすお:「当然だ。ボクは、対戦相手に対しては、
完膚なきまで叩き潰すのがポリシーだ。」
オレ :「おまえ、それ度が過ぎると、
友達なくすよ。
やすお:「さ、おまえも早く決めたらどうだ。フッフッフ。」
オレ :「その不敵な笑み、やらしいなぁ・・・。ま、いいや。オレはSBチームで行くよ。」
やすお:「SB?所詮は
ゴールデンカレー製造元か。」
オレ :「食品会社の略称じゃないよ!真面目な顔で、ベタなボケかますな。」
やすお:「よし、次は何を決定するのだ?」
オレ :「次は先発投手とスターティングメンバーだよ。」
やすお:「フッフッフ。なるほど、いよいよボクの采配を見せる時が来たな。腕の見せどころだよ。」
オレ :「自信満々なのはいいけどさ、早く決めてよ。おまえの次に、オレの番なんだから。」
やすお:「慌てるな。慌てるこじきはもらいが少ないと言うだろ?」
オレ :「へいへい。のんびり待ちますよ。」
やすお:「うーん、これはどうだろう。これがいいか・・・。迷うなぁ・・・。」
オレ :「・・・。」
やすお:「・・・よし、こんなところだろう。見てくれ。最強のスターティングメンバーだ。」
オレ :「どれどれ?・・・って、おい!何だよ、これ?」
やすお:「どうだ、身震いするメンバーだろう?」
オレ :「おまえ、3分も悩んだ挙句にさ、
6番打者と7番打者の打順が入れ替わっただけかよ!しかも、6番と7番の順序
     で悩むヤツはそういないぞ。」
やすお:「愚かなヤツよ。ボクの采配の完璧さに空いた口が塞がらないようだな。」
オレ :「いや、
呆れて口が塞がらないんだけど。やっぱり、おまえ、野球知らないだろ?」
やすお:「う、うるさい!減らず口叩くなら、ボクとの勝負に勝ってから言え!」
オレ :「はいよ。ちょちょいのちょいっと。オレの先発はこんな感じだね。さ、試合開始だぞ。」
やすお:「おう、かかってきなさい!」
オレ :「オレ先攻(せんこう)で、おまえ後攻(こうこう)ね。」
やすお:「待て!おまえが先生で、ボクが高校だと?つまりボクは
高校生レベルと言いたいのか!?」
オレ :「アホ。先に攻撃するのが先攻。後に攻撃するのが後攻だよ。」
やすお:「あ、ああ、なるほど。そういう言い方もあるな。」
オレ :「さ、早く投げろよ。」
やすお:「フッフッフ、いくぞ、
超スーパーストレート!
オレ :「打ったぁ!よし、センター前ヒットいただき!」
やすお:「不覚を取った。ま、まあいい。次行くぞ。
超ハイテクウルトラスライダー!
オレ :「打ったぁ!よし、1・2塁間ヒットいただき!」
やすお:「ぐっ・・・。何ということだ。ボクの投球術が読まれているというのか!?」
オレ :「おまえさ、何で打たれたか気付いてないの?」
やすお:「ど、どういう意味だ?」
オレ :「あのね、いちいちピッチャーが投げるときにさ、
球種(きゅうしゅ)を叫ぶヤツいるか?球種言っちゃったら、狙う
     のあたり前じゃない?」
やすお:「きゅ、
急須?お茶はいらん!」
オレ :「だから、恥ずかしい時に、ベタなボケはやめろって。」
やすお:「く、くそ。結局1回に2点を献上してしまったか。フ、まあいい。これぐらいなら、ボクの最強打線で逆転可能だ。」
オレ :「それじゃ、投げるぞ。」
やすお:「さぁ、来たまえ!」
オレ :「そりゃっ!」
やすお:「打ったぞ!よし、これは大きい、ホームランだろう!ハッハッハ!」
オレ :「はい、
キャッチャーフライ。1アウトね。」
やすお:「あれ・・・?キャ、キャッチャー・・・。フ、まあいい。次の打者はそうはいかんぞ。」
オレ :「投げるぞ。それ。」
やすお:「打ったぞ!よし、今度は大きいぞ。これは間違いなくホームランだ!」
オレ :「はい、
ピッチャーフライ。2アウトね。」
やすお:「あれ・・・?ピ、ピッチャー・・・。フ、フフフ、驚いたな。おまえのピッチャー見事だな。敵ながら完敗だ。」
オレ :「
1回2アウトで、何で完敗なんだよ。野球は9回まであるんだからさ。」
やすお:「え?あ、ああ、そうだ。ボクの戦いはこれからが本番だ。」
オレ :「・・・。投げていいか?」
やすお:「待ちたまえ。少し
作戦タイムだ。
オレ :「作戦タイムって・・・。バレーボールの試合じゃないんだから。」
やすお:「よし、決まった。
バッター交代だ!
オレ :「う、うそーん!?
初回から3番バッター交代なの?クリーンアップなのに!?」
やすお:「フッ!おまえには、ボクの完璧な采配が理解できるわけがなかろう。さ、早く投げたまえ!」
オレ :「はいよ。」
やすお:「よし、今度が鋭い当たりだ。これはヒット間違いなしだろう。」
オレ :「はい。
セカンドゴロで3アウト。チェンジね。」
やすお:「う、作戦が裏目に出たか・・・。フ、まあいい。
気を取り直してピッチャー交代だ!
オレ :「え、ええ?ピッチャーも交代するの!?おまえの采配、早さが自慢だなぁ・・・。」
やすお:「フッフッフ。これからの時代を乗り切るには、的確な判断とスピードだ。まぁ、おまえには到底辿り着けない境地かも知れ
     んな。」
オレ :「やかましいな。そんなことより早く投げろよ。」
やすお:「今度は厳しいコースで勝負だ。いくぞ、そりゃ!」
オレ :「ほう。いいコースじゃん。」
やすお:「フッフッフ。次はこれだ。」
オレ :「お、なかなか。」
やすお:「それ!」
オレ :「いいねー。厳しいよ、このコースは。」
やすお:「おりゃ。」
オレ :「はい。ボールで、
フォアボールね。1塁進塁。」
やすお:「おまえ、卑怯だぞ!なぜバットを振らない!?」
オレ :「だって、ボールとわかってる球を無理やり打つバカいるかよ。」
やすお:「フ、おまえはいつも自分のことばかりか・・・。おまえはやがて、誰からも信用されなくなって、誰にも看取られることな
     く死ぬ行く運命なのかも知れん。」
オレ :「勝手にオレの死に様を予想すんなよ!」
やすお:「これ以上、得点を取られるわけにはいかない。ボクのプライドが許さないからな。」
オレ :「で、どうするの?またピッチャー交代するの?」
やすお:「バカめ。おまえなんかに、ボクの采配を読まれると思ったら大間違いだ。」
オレ :「ほう。どういう作戦で来るんだよ。」
やすお:「よし、
ここで敬遠だ!
オレ :「えっ!?おまえ、この場面で敬遠はないだろう!?オレのバッター強打者でもないしさ、塁を埋める必要もない
     し・・・。」
やすお:「やかましい。ボクの采配に文句を言うな。」
オレ :「いやぁ・・・。おまえの采配、絶対に読めないよ。」
やすお:「さ、投げるぞ。」
オレ :「好きにしなよ。」
やすお:「フッフッフ。敬遠成功だ。さすがはボクの選らんだピッチャーだけあるな。」
オレ :「っていうか、
敬遠に失敗するピッチャーの方が奇跡だけどな。
やすお:「よし、次なる作戦はと・・・。」
オレ :「あのさ、相手打者一人一人に対して、作戦練るのやめてくれないか?時間かかってしょうがないよ。」
やすお:「おい、野球というスポーツはな、対戦相手一人一人の癖とか性格とか、そういう個性を見抜いて勝負に挑むものなのだ。」
オレ :「おまえの言うことは否定しない。でも、ゲームの場合さ、
対戦相手はオレ一人だよ。
やすお:「うるさい。そんなことは知っている!ボクは野球理論について説明しているんだ。おまえは黙って聞いていればいいん
     だ。」
オレ :「ホントに自己中心派だなぁ。」
やすお:「ノーアウトでランナーが1塁と2塁か・・・。よし、
ここはスクイズ対策で行くぞ!
オレ :「おい。ランナーが2塁1塁で、何でスクイズなんだよ!しかも対戦相手に作戦告げるな。」
やすお:「これ以上、失点するわけにはいかないんだぞ?当然の作戦だろう。」
オレ :「・・・。」
やすお:「な、何だ、その目は!?ボクに何か文句があるのか?」
オレ :「おまえさ、野球の用語は知ってるけどさ。
用語の意味を理解してないだろ?
やすお:「バ、バカを言え。ボクの教科書に
”不可解”という文字はないのだ。ボクのやり方は誰にも文句は言わせん!」
オレ :「わかったわかったよ。もうクレームつけないから、スクイズ対策でもしてくれ。」
やすお:「言われなくてもやるつもりだ。黙っていろ。えーと、こうして・・・。」
オレ :「え、ちょっと待て!そのボタンを押したらダメだって!」
やすお:「何?あ、
ゲームが終了してしまったぞ?野球は9回までなのに・・・。」
オレ :「違うよ。おまえが強制ゲームセットしちゃったんだよ!さてはおまえ、負けるのが怖くて逃げたな!?」
やすお:「バ、バカを言え。そんなわけないだろう。ボクの教科書に
”敗北”の文字はないんだぞ!」
オレ :「でも、現実におまえはゲーム終了の操作をしちゃったんだ。その事実は認めろよ。」
やすお:「そ、それはだな。ボクの教科書に
”誤操作”という文字があったのだろう!」
オレ :「やかましい!」
 

 
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