| 電話 | プルルル・・・、プルルル・・・。 |
| オレ | はい、もしもし。 |
| 男 | 元気かぁー!田舎のおじさんだぞぉー! |
| オレ | ・・・? |
| 男 | ん、どうしたぁ?おじさんの声忘れちゃったのかぁ?おーい、どしたぁ、返事しろぉ!おじさんはおまえをそんな風に育てた覚えはないぞぉ!なーんちゃってな。はっはっは。 |
| オレ | あのぉ・・・。 |
| 男 | ん、どした?やけに元気がないな?あ、さては、おまえ、彼女にふられたな?やっぱりかぁ。ま、そのうちいいことあるよ。うんうん。 |
| オレ | いやぁ、おたく、間違えてますよ? |
| 男 | へ、何を? |
| オレ | いや、間違い電話ですよ。 |
| 男 | はっはっは、何を言い出すかと思えば、つまらん冗談はよせ。おまえ解体屋の一人息子で別名”壊しのジロー”だろ? |
| オレ | 変な別名だなぁ。解体屋だからって”壊しの”って・・・。 |
| 男 | ごまかそうってもおじさんにはお見通しだよ。声まではごまかせないからな。そのカラスが鳴くような声は間違いなくジローだ。 |
| オレ | それを言うなら、蚊の鳴くような声じゃないかな?そんなことはどうでもいいんだ。おたくね、間違い電話って言ってるでしょ! |
| 男 | あ、わかった!おまえ、おじさんのこと忘れたんじゃないか?久しぶりに話するもんなぁ。前はたしか・・・、そうそう!3日前だもんな。 |
| オレ | ぜんぜん久しぶりじゃないじゃん! |
| 男 | ほら、おじさんだよ。ニッカポッカはいて、ランニングシャツ着て、頭にベレー帽かぶったおじさんだよ! |
| オレ | 何、その格好!?めちゃくちゃセンス悪いじゃん! |
| 男 | はっはっは、前会った時も同じこと言われちゃったな。 |
| オレ | あんたと違って、ジローって人はまともみたいだね。 |
| 男 | おい、いい加減にしろよ。おまえがジローだろうが!もう、隠さなくていいって。おまえが昔、”お漏らし将軍”ってあだ名だったことは誰にも言わないからさ。 |
| オレ | ”お漏らし将軍”!?何、寝小便のこと?ジローっていじめられてたんじゃないの!?さらに将軍って付けられたら、ヘコむなぁ。 |
| 男 | 心配するな、おじさんの口は、そりゃもう堅い堅い。はっはっは。 |
| オレ | ・・・めっちゃ、軽そー。 |
| 男 | おお、そうだったそうだった。電話したのは、大事な相談事があったんだよ。 |
| オレ | ねぇ、ちょっと待ってよ!オレは本当にジローじゃないんだって。もうこっちから切るからね。 |
| 男 | おい、待てよ。そんな言い草はないだろう!散々おじさんをもてあそんでおいて、用がなきゃポイッかよ! |
| オレ | あ、あんたジローと何してんだ!?・・・うわ、想像したくねー! |
| 男 | とりあえず、聞けよ。前はおじさんがおまえの相談に乗ってやったじゃねーか。ジロー、今度はおじさんの相談に乗ってくれよ。 |
| オレ | だからジローじゃないって。 |
| 男 | まだ言うかっ!そ、そこまで言うならな、おまえがジローじゃない証拠を見せてみろっ!どうだ、見せてみろ、このやろう! |
| オレ | 普通さ、本人だという証拠を見せるもんじゃないか?それに電話越しで見せてみろって言われてもなぁ・・・。 |
| 男 | つべこべ言わず、おじさんにアドバイスしてくれ。わかったな? |
| オレ | あー、もう勝手にしろよ!で、何、相談したいことって? |
| 男 | あのな、おじさんな。今ものすごく腹減ってるんだけど、おじさんの家の近所の食堂でさ、ラーメンと焼そば、どっちがうまいと思う? |
| オレ | 知るか!お店に聞け、そんなの! |
| 男 | わかった!あ、あとな、おじさんな、最近、ペットを飼いたいんだよ。猫と犬、どっちがおじさんと友達になってくれるかな? |
| オレ | 知るかよ!あんたじゃ猫と犬どころか、猿もキジもみんな逃げていくわ! |
| 男 | わかった!え、えーとね、おじさんな、この前初めてカレーライスを作ったんだ。で、”おじさんのカレー”って商品にしたら、売れるかな? |
| オレ | 絶対に売れないっ!!もういい加減にしてくれ!じゃ、もう切るぞ! |
| 男 | あーあー、待ってくれ!もう一つ聞いてくれ!な?頼むよ。おじさんを助けると思ってさ! |
| オレ | 助けたいって気持ちがぜーんぜん沸かない! |
| 男 | 何ぃ!おまえ、おじさんに歯向かうのか!?よし、わかった!そういうことなら、こっちにも考えがあるぞ! |
| オレ | どうする気だよ? |
| 男 | ”おまえのかーちゃん三段腹”って近所に言いふらしてやるぞ!はっはっは、どうだ!?これでおまえは何も言えまい。さぁ、おとなしくおじさんの話を聞け! |
| オレ | ガキか、オレは・・・。ああ、言いふらしていいよ。三段腹でも五段腹でも好きにしなよ! |
| 男 | お、おい!おまえ、五段腹はやばいだろう!?それじゃ変態だぞ! |
| オレ | 変態はおまえだっ!バカッ! |
| 男 | ・・・!ちょっと待て。今、おまえ、おじさんのことバカと言ったな? |
| オレ | ああ、言ったよ。それがどうした? |
| 男 | ジローは決して、人のことをバカと言わない・・・、さては、おまえ!ジローではないな!? |
| オレ | 最初っから、そう言ってるじゃねーかぁ!! |
| 男 | いやぁ、すまん、すまん。つい声が似てたから、調子に乗ってしゃべり続けちゃったよ。はっはっは。それなら、早く教えてくれればいいのにさ。 |
| オレ | かなり前から違うと訴えてましたけど・・・? |
| 男 | そりゃ気付かなかったな。はっはっは。 |
| オレ | というわけで、これでお別れするよ。さようなら。 |
| 男 | お、おい、何言ってるんだよ!まだおじさんの話は終わってないぞ! |
| オレ | はぁ!?どういうこと? |
| 男 | だって、おまえ、ジローの弟のサブローだろ? |
| オレ | いい加減にしろっ! |
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