竜二
伝説の名優金子正次の生涯唯一の主演作品。
舞台俳優、舞台脚本家として、その才能を高く評価されていた金子正次が、
映画界に映画の内容そのままに真正面から殴りこんだような作品です。
そんな金子正次は、この映画公開直後にガンの為他界してしまい、
よりこの映画の価値は跳ね上がったというのが本当の所ではありますが、
病を押しての死力を尽くした演技は、
スクリーンを通して実にリアルに伝わってくるものがあります。
「ブラックレイン」の松田優作も同じですが、
一本の映画に俳優、役者として、人生そのものをかけた姿というのは、
観る側に訴えかけるものが違うのでしょうね。
いや松田優作もきっと金子正次のこの生き様を見ていたからこそ、
「ブラックレイン」にかける気持ちという形になって現れたのではないでしょうか。
この映画の製作背景を映画化した「竜二Forever」の中で、
おそらく松田優作らしきスターが登場しますが、
金子正次という人間は、その知名度以上に
ショーケンなどの大スターに認められていた人だったようで、
きっと目の前で見た金子正次の男気溢れた姿に影響された
硬派のスター達は本当に少なくないだろうと思います。歌手の尾崎豊やジェームス・ディーンなんかもそうですが、
やはり誰も死んだ人間にはかないません。
ですから、映画の内容や音楽の内容以上に
彼らは世間から高く評価される事も少なくはありませんが、
この映画はそういう後ろ盾が無くても十分に名作となる映画だったでしょう。
金子正次という人は、脚本家としての才能に溢れた人でした。
内容的には「ちょうちん」なんかもそうですが、
ヤクザ映画なんだけど、カタギの家庭の匂いを持っているというような
昔からの仁侠映画よりも泥臭いというか、
人間らしい姿を描いた作品になっています。
これがまた非常に良いんですよね。
私は「仁義なき戦い」シリーズも大好きですが、
こういう温かくてほろ苦いドラマも大好きですね。
この映画の脚本家鈴木明夫という名前は、
彼の脚本家としてのペンネームですが、
その後彼の脚本を使った「獅子王たちの夏」「ちょうちん」などは、
そのまま金子正次という名前がクレジットで使用されていました。金子正次の竜二の熱演を周りの役者達もおおいに盛り上げています。
特に光っているのは、相手役の永島暎子の演技は印象に残ります。
決して顔は、私のタイプではないんですけどね(笑)
でも映画とか観ていると本当によく思いますが、
あんなに出来た女の人ならば、そりゃ〜誰でも惚れてしまいます。
そして舎弟の一人を演じている当時「アゴ&キンゾー」で売れていた
コメディアンの桜金造も非常に味のある演技を見せてくれます。
私的には、竜二の舎弟からのし上がっていく役を演じた
元フォーリーブスの北公次の演技だけは、物足りませんけどね。
歌は冒頭の方でお話しした金子正次の盟友ショーケンが歌っていますが、
ラストのエンディング・ロールで流れるショーケンの歌が、
実に味があって良いんですよね。私はこの映画が本当に好きで、
嫌というほどこの映画を観ているんですが、
本当に金子正次って人にもっと長生きしてもらって、
彼の作品をもっと見たかったという事をいつも感じます。
島田紳介や松本人志もこの映画が大好きだとTVで語っていましたが、
きっと金子正次のこの映画を好きな人って本当に多いんでしょうね。
男なら是非この作品の金子正次の姿、竜二の姿を観てほしいものです。
ちなみに知り合いの方に言われて初めて納得してしまいましたが、
きっと長淵キックの原点は、この映画の金子キックなんですね。
蹴り方やよれ方がそのまんまで言われてから観てみて、
あらためて笑ってしまいました。
でもそれだけ影響力がある人なんだなぁ。