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 小田原建築探偵〜 大阪万博編 
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34.その後のウルグアイ館のその後〜4


オリジナルをイメージさせるフォルムに
に工事中。ここ迄出来るS氏は本当に
幸せ者である。

御家族の深い家族愛があってこそ
成せる業だ。何せ自宅が大阪万博
のパビリオンの中でも特に有名な
訳でもないウルグアイ館の様な外
観に変身しようとしているのだ。


家の主(あるじ)は、ある時期、週末に
なると兵庫県氷川郡に出掛けていた。

氷川郡にお気に入りのスナックが
出来た訳ではない。ある日、家の前
にトラックが停まったかと思うと前の
道路を通行止めにして何やら降ろし
だしたのだった。

塗装がボロボロになった朱色の鉄柱。
大きくウルクアイと書かれた意味不明
な、でっかいガラス。「なに?これ?」

兵庫県氷川郡でラーメン屋として第二
の人生を送っていたウルグアイ館が
解体されると聞き、その一部を貰い受
けて来たのだ。


御家族の頭の中は??だらけ。目が
点になった事だろう。その後数ヶ月間
玄関先に鎮座していた鉄柱とガラス
であった。

近所の町並みにも自然と馴染みだし
ウルクアイの生い立ちの説明も行き渡
り、その意味を聞いてくる人も減って
きた処だった。


朱色の鉄柱も近所からは鳥居とも呼ば
れ縁起物と思えば悪くない。家人はそ
う考えるようにした。


S家に静寂が戻りつつあった。主は、
相変わらず休みともなると30年以上
も前の大阪万博の幻の逸品と散らば
ってしまった青春のカケラを探し廻っ
ていた。


そんな静寂で平和な時間は長くは
続かなかった。ある日、またもや家
の前にトラックが停車した。

作業服を着た男達が降りてきた。
そう言えば最近、主は家を改築する
予定もないのに工務店の人と何やら
打ち合わせを繰返していたのであっ
た。

ウルグアイ館再建の本格的な始まり
であった。”おとこのロマン”である。
”俺の青春”である。
家人はそう考えるようにした。

(前ページ写真共S氏提供。)