ガンダム ポージングと重心位置の関係

   

 2013年8月半ば、今更「ガンダム」と言ったって、その筋のブログで MG(Ver 3.0)の話題は、

既に飽和状態である。「何でまた、このサイトでガンダムなの?」と思われても仕方が無い。

なので いささか趣向の異なる部分に焦点を当ててみたい。

 つまり「ポージングと重心位置の関係」が、ここでのテーマである。

言うまでも無く、ここ30年でガンプラは全く違う次元に進化した。関節の数が格段に増えた事に加え、

各関節の自由度の大きさは人間に迫るところがある。ここではRGMG(Ver 3.0)を比較しながら、

フェンシングを題材に、無理なポーズをさせるための条件について考察する。

(別売りのアクションベースを使えば造作も無い事だが、ここでは支柱を使わずに立っている事を追求する

 

 

課題:フェンシング(フルーレ)の攻撃姿勢を再現する事。

    (ただし、左手には盾を装備し、盾にライフルを固定する)

 

  

 

正直、これは意外と難しい。 MGの箱絵(脇)もしくは、RGの説明書(P10)に描いてあるポーズでは、

右手にサーベルを持つが、左脚が前に来ている。しかも右脚は膝を地に付けている。つまり上半身と下半身が捩れていて、

真上から見るとX形になっているので重心位置は期せずして真下に来るので立ちやすい。 しかしフェンシングの場合、

サーベルと脚が同じ方(右手&右脚が共に前)となっている。更に、歩く姿勢(歩幅が狭く、直立に近い姿勢)ではなく、

半ばしゃがみ込んでいるバックランジ姿勢である。

 

   

  つまり、重心と足の関係からすると、右足(靴)と左足(靴)を結んだ直線上に立てた板のようなもの

上図において、右上→左下のベクトルにかかる力には極めて脆弱である。それでも「何も持たず丸腰」で良ければ、

両手を足と逆さ(右上&左下 つまり、脆弱な方向)に伸ばす事で、とりあえず重心位置は中央に来る。

(依然として、右上→左下の外乱要素には脆弱なまま)  しかし今回は、右手に長く軽いサーベルを持ち、

左手にはライフルを付けた盾を持つので、左右は非対称となる。


            


 ここで、油粘土の団子と竹串を使って実験すると面白い。団子は結合部品であると同時に、各部品の重心位置でもある。

この竹串団子模型を使って考えると、

 重量物は、右足(靴)と左足(靴)を結んだ直線(重心線)と近い位置に有る事が望ましい。

と結論する。そのために、盾を左足の真上に置くべく、思い切って左腕を後ろ(上図において右)に引いているのである。

また、やじろべえの原理で、盾に比べて軽いサーベルは、右足の前方(上図において左)に出来るだけ遠く延ばしたい

 

  

 

 ここでMGでは、袖先の部品(G2M 四角い枠)を外すと手首の自由度が増すので、サーベルを袖と

平行に近い角度に出来る。よって、右手を前に突き出す事ができる。

 

  

 

 しかしRGでは、手首の角度が袖と直交(5度ほど傾くが)しているので、腕を伸ばすとサーベルが

上に向いてしまう。そのため仕方なく、右腕を下に下げざるを得なかった。(これはバランスを取る上で

不利である以上に、見た目がみっともない) 当然、左腕を更に後ろに回さなくてはバランスが取れず

これまた不自然である。更に言えば、盾の固定具(F 07-1)が、腕と締結する位置に選択の余地が無いため、

肘の方向に、見た目上の無理(刑事物の逮捕のシーンで、暴れる犯人の腕を後ろ手に捻ったような状態。

「うぅっ、痛い!」言いたくなるような肘の方向)がある。

 

 では、両腕のポジションが決まりさえすれば、右脚をいっぱいに屈し、かつ左脚のハムストリングを真後ろに

伸ばしきった、いわゆるバックランジ姿勢が完成するかと言えば、そうは問屋が下ろさない。

 

  

 

 上図(共に真正面から見た写真)を見ると、MGでは脛の角度が「これでもか!」と思うほど、向かって左に

傾いており、その事で上半身+盾の合成重心(便宜上、窮余の一策で作った言葉なので、世の中に「合成重心」なる

用語は多分無い)を左右足(靴)の中央に持って来ている。

 これを可能たらしめるのが、MGの踝(くるぶし)が、二つの関節を擁しているからであって、

踝が一つの関節で済ましてあるRGではMGほど倒せない。そのため、RGでは左足を真後ろではなく、

左後ろの桂馬の位置に置いている。(内股X脚に見えて、みっともない)

 

 RGのポーズMGに比べて深く沈んでいる(低い姿勢)が、それは腕(手首)の関係で上半身のバランスが

取り辛いため、歩幅を更に稼いで安定を得るのが目的だった。

  MGには背骨に当たる部品(I8、I12、I32、I33)を擁しており、これにより猫背というか腹筋運動のように

腹を丸めた姿勢が可能なのに対し、RGでは腹の赤い部分と胸の青い部分が一体になる作りで、胴を曲げる機構が無い。

(尤も、腹にコアファイターを組み込む事を諦め、ダミー(F5)を使えば多少の事は可能になりそうではある)

そのためRGで下半身のバランスをとると、往々にして胴が後ろに仰け反ってしまう。ここで胴を垂直に起こすと

重心位置が地面から見て高い位置になってしまう。重心が高ければ不安定要因も増えるので、当座は諦めた。

 因みにRGでは、右の太ももと腹が痞えるので、やむを得ず右腰の装甲板(黄色の四角)を外してあるので、

ここまで 股関節の自由が大きくなったのである。

 しかし、部品の欠落はモデラーとしては恥だし、RGでは不可能だという決定的な理由も見つからないので

心もとないが、無理をして再度試みた。(MGRGも、共にコアファイターを装備し、基本的に無改造)

 

  I-22m.JPG

とりあえず、RGでも上図までは可能。(後ろにあるピンボケはMG

盾の位置(G8の高さ調節)は、苦労が無かったわけではない。(むしろRGでは、盾を高い位置に上げて、

MGよりも角度を立ててある。質量の分布を中央に寄せる方が「やじろべえ」の腕を伸ばすより得策と考えた。

サーベルを持つ手を伸ばせない事も理由のひとつ)

 

 かつてRGが出現した時も高い完成度に驚愕したが、MG(Ver.3.0)が更に上を行く点で、

正に驚かずにはいられない。

 





 2019/8月 RGで「νガンダム RX-93」が出た。これは、MG(Ver.3.0)をも凌駕する作りとなっている。
驚くべきは、腰回りの構造であり、胴体を横倒しにする方向の関節が追加された。(以前からもチラホラ出てきてはいたが)
お辞儀をする機能と横倒しを併せ持っている。

    

股関節の高さ調整機構の追加で大腿部の高さが大きくなった。(右下げ、左上げ)これが浅いと、前後に大股を開いた際に
上半身が仰け反る事になるが、腰部のリフト機構のお蔭で前屈みに構える事ができるようになった。

 

RX-78 と比較して、より自然なポーズになった。



この方が更に偏り、より辛いポーズ(重量物の盾が足の無い空間に張り出している)だが、きちんと踏ん張っている。
胸が右(サーベル寄り)に傾くためバランスが取れる。(敵が真正面に居るのに盾が前に無いのは不自然であろう)
肩の関節が張り出すため、腕が前を向く。



左足に注目。右脚と揃って前後に伸びている。本来なら左右のバランスは保てない筈だが、
全体の重心位置が厳密に中央に位置するので、股を横に開く事無く、しっかりと立っている。

ジオラマ 共にRG

  IMG_0015m2.JPG

  写真は「一連の流れ」の中から「一瞬」を捕らえて絵に焼き付けたものだが、

 本来、「動き」というのは「安定」とか「静止」の対極に位置するものである。

  ジオラマは写真を立体化したものだから、極めて不安定な「一瞬のポーズ」を永遠に続けるわけで、

 動と静の矛盾の中にある。地に根を張る「建築」ならば いざ知らず、「置物」で不安定な状態を安定に

 継続しなければならないのである。

  IMG_0038m2.JPG

 

  IMG_0011m2.JPG

  ザクのポーズにはケチが付きそうだが、考えてみると2013年現在、ホンダのアシモは、

 やっと5kgの荷物を携行できる程度である。 そこから推測するに、モビルスーツが、オリンピック選手の身体スペックを

 身長比に合わせて10倍した能力(「重量上げ」なら、180kgの10倍として 1.8t)を備えるとは考えにくい。

  多分、一般人男性の10倍と比べてもパフォーマンスは低いのではないかと推測すると、ザクはきっと一歩、一歩、

 踵を地に着けながらドタドタと歩くのではないかと想像する。

  また、刀や斧を使った肉弾戦の場合も、古代ローマ帝国の騎士の如くノソノソとやるに違いないと考える。

(60tの巨人が、現代版のボクシングを始めたら、建設工事現場どころでは済まないほどの地震が起こるだろう)

  IMG_0031m2.JPG

 

  IMG_0008nm2.JPG

 

  IMG_0007nm2.JPG       IMG_0001nm2.JPG

 


単体でのスタディ

 この例は先に書いた通り「如何に不安定に見せるか」が課題であるが、同時に震度2程度の地震で転倒するようでは困る。

 この例は「力み」をテーマにした。そのために両膝を曲げて腰の位置を下げる。 腰を捩じると同時に 頭を回して左膝と同じ方向を睨む。

 左腕も同様に左膝と同じ方向に向けるが、この時に二の腕を回すのでは「力み」が見えないので肩を起こす。

 こうする事で、次の瞬間に右の拳と右脚が前に出てくる絵面が想像できる。

 あえて真上からの写真は省略するが、重量分布がガンダムより中央に寄るので確かに楽ではあるが、両足を結ぶ直線を境に、

 左右の重量を等しくする必要が有るので、全ての関節を緩やかに曲げた状態で、かつポーズや部品形状が非対称というのは苦労する。


 余談だが、緑のザクに襲われたガンダム(RG)は左脚を伸ばしきっているが、これだと格闘技では負けも同然である。

 重量感というものは、各関節を緩やかに曲げた状態で「にじり寄ってくる時」に感じるのである。


     


   



   参考1)

   








   参考2)
           



 

ジオラマ 共に MG

  02mm.JPG

 もしも、今から6年前にギャンを作っていたなら、完成度の高さを絶賛しただろうが、Ver3.0 の後に組むと、

荒削りというか、スープの具材に火が通ってないような気がする。特に足首の関節については、凝っている割には

稼動範囲が狭い(つま先を伸ばす側)。 また、ズボンの裾が地に当たるので、つま先を伸ばしきれない。

(仕方なく、裾を2mm程、切り落とした)

  01mm.JPG

 

    

 

 

 歴史の教科書を見ると「義経は頼朝に追われて自害した」とあるが、異説では「モンゴル帝国の創始者であるチンギス・ハーンは、

彼の源義経である」らしい。

実は、小生も歴史の異説を好む一人である。  小生が考える「テキサスコロニーの一幕」は次の通りである。

 

 ギャンゲルググのコンペは実際に行われたが、それに先立って操縦試験も行われた。キシリアの元に転がり込んだシャアが、

テストパイロットとして選ばれたが、古参の一人も並立しないと通りが悪いと言う理由でマ・クベも選出された。そのため、二人で

とっかえひっかえ乗り比べていた。(シャアは、比べる前にゲルググが気に入ったようで、早々、独断で赤い塗装を施してしまう。

 恐らくは、「私が乗るからには、赤い塗装の方が気が乗るのだがなぁ」 「じゃ、赤く塗っちゃいますか。片方が色違いでないと

外から見分けがつきませんからな。どうせお偉方は、格好なんかロクにゃ見てませんから」 「やはり、そんなものか?」

「三日でやりますから、お任せ下さい」 こんな会話が有ったのかもしれない。)

 

 実は、ガンダムと交戦した当時、ギャンに乗っていたのはシャアである。マ・クベが乗っていたゲルググが脇で傍観していたのは、

例によってズルく立ち回ったからで、「オレの獲物に手を出すな!」は、戦闘の記録を帰投後に改竄させたのである。(部下は周知の

常習である) だいたい戦闘中の死に際に「あの壷は良い物だ」というのは不自然な台詞であろう。

 実はマ・クベが暗殺されたのはオフィスだったのだ。だとすると、壷の鑑賞というのも分からなくはない。

「積年の恨みを抱いていた下士官が、シャアにまで汚い手を使うマ・クベに怒りをぶつけた」という話も有るが、未だに実行犯は

捕まっていない。「キシリアが手を回したから犯人が逃走できた」というのが、もっぱらの噂ではある。

 キシリアにして御しがたいマ・クベジオン中の鼻つまみ者で、彼の死後、遺品や記録は粗末なダンボール箱に放り込まれていた。

しかし当局(要はギレンの差し金)が、マ・クベの死亡記録を作成する段になって、キシリア側が「形だけの報告書」でお茶を濁した。

(残った疎開資料を適当に切り貼りして、申し訳程度に作成した物を送付した)だから、公式報告書のあちらこちらに内容の矛盾があるのだ。

 

 ギャンガンダムに討たれた時、背中からやられたのは、ギャンが足を壊して四つんばい になったためで、ララァは倒れたギャン

駆け寄ったのだ。 シャアは、この時点で辛くもギャンから脱出しており、最後の一撃を食った時には無人だった。

 ゲルググが採用された本当の理由は、「ギャンシャアが乗っても負けたMS」という結論が出たためである。

シャアにしてみれば空間移動の素早さこそが心情であり、シャアMSによる陸戦で華々しい成績を収めた記録は少ない。

 

                                     Fulcrum 著