未来潮流の模索
前出のウィング・カーは重大事故を繰り返したため1983年に禁止となり、車両底面(前輪後端から後輪前端
までの区間)を平面にする事を規則で義務づけた。
確かにフラット・ボトム時代の後期には1982年当時に勝るグラウンド・エフェクトを得るが、それまでは
従来どおりのウィングに空力部品の主体を戻さざるを得なくなった。
フラット・ボトム初期は車両底面で得るダウンフォースが激減したため、サイド・ポンツーンを長くするか、
切り詰めるかで議論が分かれたが、結局インター・クーラーの置き場所に困って、サイド・ポンツーンは
物置小屋に成り果てた。トールマンTG183 に至っては、正に「やっちまえ〜っ」って感じのレイアウトである。
このクルマの特徴は、短いサイド・ポンツーンにインター・クーラーを置き、ラジエーターは厚いフロント・
ウイングの隙間に挟み込んだ点である。また、フロント・ウィング底面に小型のアンダー・パネルを付けて
グラウンド・エフェクトをあて込んだが、ピッチングが酷く、更に各配管が七面倒臭くなり、次のTG184では
大人しくラジエーターを両脇に下げた。(このTG184こそ、アイルトン・セナを世に知らしめたクルマである)
トールマンTG183(TG184)のタンデム・ウィングは、「後輪車軸より前方では、車体幅の制限が緩い」
というレギュレーションを逆手にとった抜け道である。
ターボ時代の外観的特長は、フロント・ウィングが驚くほど大きく、リア・ウイングに至っては垂直に
なるまで反り返り、グラウンド・エフェクトに勝るとも劣らないダウンフォースを獲得した。しかし驚異的に
大型の空力部品は、かつて最も心血を注いだ空気抵抗を著しく増大する物に他ならない。
ターボ付きエンジンの有り余る出力は発生した空気抵抗を撥ね退けるには充分であり、空気抵抗の代償
として得られる類い稀なダウンフォースを武器に、イン・フィールドでのタイムを短縮した。
逆に言えば、「空力におけるポスト・グラウンド・エフェクト・セオリーを何処に求めるか」という
課題に答える当時の結論がターボであり、これが1980年代後半のトレンドとなった。
(Fulcrum 著)