小型化の罪

 1970年に登場した13インチのフロント・ホイールは、以前の15インチ・ホイールに比べて小型・軽量と

なるので、バネ下荷重のみならず、空気抵抗も低減する。特に3リッター時代のワイド・タイヤは直径の違いに

よる空気抵抗の差が顕著である。

 しかし、15インチ・ホイールを13インチ・ホイールに変更すれば、ブレーキ・ディスクを12インチから

10.5インチに落とすか、或いはインボード・ブレーキ方式を採用するか、二者択一を迫られる。

  1971年当時の10.5インチのベンチレーティッド・ディスクは、熱容量も冷却力も、安心して使用できる段階

に成熟していなかった。この問題は各車とも共通の悩みで、アウトボード・ブレーキ方式を採用したチームは

テクニカル・コースとハイスピード・コースで、大径、小径のホイールを使い分ける始末だった。

 こんなところに4WDへの追慕を感じないでもないが、ロータス72インボード・ブレーキ方式を採用

する。そのため、大径のブレーキ・ディスクによる、アドバンテージがあった。

     @ ハーフ・シャフト  A タイ・ロッド  B ブレーキ・ディスク  C ブレーキ・キャリパー

     D ダンパー  E スタビライザー・バー

 

 1970年代が現在と比べて如何に牧歌的とは言え、当時のブレーキ性能は好条件下で1.8Gに至る。減速度は

車輪のブレーキ・トルクによって得られるが、減速時には荷重が前輪に偏るため、全ブレーキ・トルクの7割を

前輪が受け持っている。そのため制動力が最大の時、ハーフ・シャフトにかかるトルクは1.2Gの勘定となる。

これはハーフ・シャフトの捩れ剛性と直結する大問題だ。

 また、バンプもしくはリバウンド時(特にハード・ブレーキングでフロントが沈み込んだ時)にブレーキ・

トルクを食うと、ハーフ・シャフトにはS字に曲げるモーメントが働き、応力が更に厳しくなる。

 リア側のドライブ・シャフトも理屈は同じだが、問題になるのは加速時である。加速は滅多に1.0Gを

超えないから、スクオッドも減速時の前輪と比べて、さして大きくはない。よって気にする必要は無いのだ。

 

 2000年現在、ブレーキ性能は好条件下で6Gに至る。そのため今後、インボード・ブレーキ方式を採用

することはまず無いだろう。                            (Fulcrum 著)