ねじれの力、その応用
1970年代に入って、サスペンションの設計は一段と難しくなった。3リッター時代を迎えてからタイヤも
ホイールも極端に拡幅されて車輪全体の重量は1.5リッター時代の1.5倍に膨れ上がった。その一方で車体の
重量はわずかと言いながらも減少し続けた。
そのため、サスペンションの性能を決める重要な因子である、バネ上/バネ下の荷重比率が悪い方向に変化
した。更にワイド・タイヤは扱いにくい代物で、幅の広い接地面を常に均等を保ちながら地面に押し付けないと
その効能を発揮しない。
バネ上/バネ下の荷重比率を改善する目的で脚光を浴びた手段が、トーション・バー式サスペンションだ。
ロータス72が出現する以前は、コイル・スプリング/ダンパー ユニットの全盛時代だった。しかしコイル
スプリングは、捩りと曲げを受けるので応力が高く、同じ重量であれば、棒を捩った時の反発力を利用する
トーション・バーはコイル・スプリングより吸収しうるエネルギーが大きい利点がある。そしてなにより、
トーション・バー自体はすべてバネ上の荷重となる強味がある。
そこでロータス72を開発するに当たり、チャップマンとモーリス・フィリップは、寸法が長すぎる事が
仇となって敬遠されてきたトーション・バーを、パイプとバーを組合せてコンパクトにまとめた。
ただし問題は、バネのレートを変更する際はパイプとバーをセットで交換しなければならないなど、気難しい
クセもある。 (Fulcrum 著)