神秘 蓮の花
仏教絵画に蓮の花は欠かせないが、ヨーロッパにおいてもギリシャ神話が、神秘の魔法を放つ花として
蓮の花を取り上げている。
F1史を語る上で、フェラーリやマクラーレンと並んでロータスを忘れるわけにはいかない。とにかく
コスワースDFVの最初のカスタマーでもあるロータスは、創始者アンソニー・コーリン・チャップマン
(Anthony Colin Bruce Chapman)と共に一時代を風靡した。無類のレース好きにして鬼才のデザイナー
であるチャップマンは、市販車部門と全く切り離したコンペティション活動を展開するティーム・ロータスの
オーナー社長であった。
ティーム・ロータス(以降 ロータスと記載)は、時代のエポックメーカーとして、常々奇抜な技術、例えば
モノコック・シャーシー、エンジンのストレスメンバー化、ウェッジ・シェープやウイング・カーそれに
アクティブ・サスペンションも最初に投入したが、先駆的な挑戦を試みる一方で、失敗すると過去に実績が
ある古物を引っ張りだしては焼き直した。そのためロータスの各モデルは押しなべて長寿を全うしている。
1982年12月に急性心不全により享年54歳の人生を閉じたチャップマンとロータスは、実質的な意味で運命を
共にした。不世出の逸材であっただけに、チャップマンの急逝は残念の一語に尽きる。
ここで扱うロータス72は、正しくロータスの黄金期を飾る名車であり、その後に続くF1の方向を
示した一台と言えるだろう。 (Fulcrum 著)
ロータス72E