誤解ゆえに、似ていながら異なる姿
忘年会の定番と言えば、上司の口癖や三枚目の役者を模した「他人の者まね」だが、似ていない場合も少なくない。
要するに対象の特徴を、どのように捉えるかが決め手なのだ。
ここに示す車ときたら、まるで空を飛ぶムササビのような姿だが、作った本人はこれがグラウンド・エフェクトの真髄だと
信じたようだ。ロータス79を手本にした新生アロウズ二代目の傑作とでも言いたいところだが、蓋を明けると空力バランスが
悪く、失敗だった。
このクルマについては文献が乏しいため、筆者の想像で論ずるしかないが、サイド・ポンツーンの真中に有る穴は
後で空けたものではなく、フロント・サスのアッパー・アームと一体化したフロント・ウイングとサイド・ポンツーンを
側板で繋いだように見える。 また、他のウィング・カーに比べて、サイド・ポンツーンが短く、後寄りである。
当時の一般的な車体は、フロント・サスの前にあるウィングでさえ廃止したくらい空力部品の前方における整流に
気を使ったのに、このA2はウィングの直後にサイド・ポンツーンを配置し、かつ側板が外界からの気流を阻んだ事が、
多くの気流を「上穴」から逃がし、グラウント・エフェクトが充分でなかったのではないかと考える。
また、最大の空力部品であるサイド・ポンツーンが短く、後寄りという事は、ただでさえ問題のポーホイズ現象に拍車が
かかる筈だ。
一般的なウィング・カーのアンダー・パネル
ルノーRE20 と アローズA2 を比べると解るように、一般的なウィング・カーのアンダー・パネル(サイド・ウィング)には、
境界が無いが、アローズA2 には内外を区切る境界が有り、外側はウィングレットの下面に沿って、後輪の直前に
排出される。しかし後輪が障害となって、気流が抜ける隙間が無い。つまり、目詰まり状態になるのではないだろうか?
このような事が失敗の原因と筆者は考える。 (Fulcrum 著)