4本足の6足靴

 6輪車という以上、足も6本有ると思いきや、4本足の前足に靴(要はタイヤ)を2足履いていたらしい。

サスペンションは、前2輪は全く同じ動きをする4足(?)独立懸架であった。至ってシンプルである。

   

しかし路面の追従性は悪く、縁石に乗り上げようものなら、ポコポコ浮き上がったようだ。当時はABSが

無かったから、タイヤが浮いた時にブレーキングするとロックするため、着地の際、タイヤに偏平磨耗、

例のフラット・スポットが出来る。そのため、思い切ってブレーキを踏めなかった。また、ブレーキングの

際にはノーズ・ダイブが起こるが、4つ足のお陰で後ろ側の前輪が浮き上がり前の2輪に多大な負担

与えた。これもフラット・スポットが出来る一因である。

 これを裏付ける理由はタイヤの大きさにもあるようだ。と言うのも偏平率が同じ場合、小径タイヤの方が、センクション・ハイト

(タイヤを横から見た時の、見た目の肉厚)が小さくなる。となると、本来タイヤの空気が吸収するべきショックもサスが

背負う事になるが、頼みのサスが、お粗末と来ている。

 だから結局のところ「4輪車には無い、コーナーにおけるアドバンテージは、あまり当てにできなかった」

と言ったのは、当時、P34のドライバーだったジョディ・シェクターである。尤も、ケン・ティレル

言わせれば、「君(ジョディ・シェクター)は、6輪車を全く解っていない」そうだ・・・

 

 しかし現在ヒストリックカーレースにおいて、P34はかなり高い成績を上げているそうで、現在のタイヤ

技術が前提ならば、6輪車も捨てたものではないらしい。

 

 まぁ、しかし例えて言えば・・・ウィンドウズが定着したパソコン世代に、いくら改良が進んだと言っても

今さら MS−DOS に立ち戻る輩は何人を数えるだろうか・・・

(Fulcrum 著)