相撲取りとボクサー
ホンダRA273にアッパーカットを浴びせた最初のクルマは、ジム・クラークが運転するロータス49。
これに搭載されていた市販エンジンがフォード・コスワースDFVである。時は1967年6月、オランダGP
にてロータス49はなんとデビュー・ウインを果たす。
Lotus 49 1967年
このエンジンの設計者であるキース・ダクワースによれば、(初戦において)コスワースDFVの出力は
380馬力/9500rpm 程度であり、420馬力のRA273はまだ10%のマージンを持つことになる。しかし・・・
小型軽量で、90゚V8と簡潔な構成のコスワースDFVは、最大出力を追及したホンダV12とは異なり、
燃費改善を主体とした中速トルク重視のエンジンだった。そのため、やっとの思いで光明を見出したホンダ勢
にとっては根底から屋台骨を揺るがす驚異的存在となった。
コスワースDFVのユーザーを年代順に並べると、ほぼすべてのチームとなる。
ロータス、マトラ、マクラーレン、ブラバム、マーチ、デ・トマソ、ティレル、サーティーズ、シャドウ、
エンサイン、イゾ、ヘスケス、パーネリー、ヒル、ウィリアムズ、フィティパルディ、ウルフ、アロウズ、
リジェ、ATS、オゼッラ
1969年のフランスGPでは、コスワースDFV勢が1〜9位を独占し、同年のイギリスGPでは1〜10位を
独占する結果となった。以来15年の長きにわたり常に勝ち得るエンジンとして市販されつづけたのである。
(Fulcrum 著)