次に見せるのは、前回と同じ角パイプのモデルを用いて、流速を 1.5 m/s にした場合である。

(前回の条件は、1 m/sであった)

 ↓ 中央断面における模式図 ↓

 

この時の流速は @D が近い値となる。

静圧分布を見ると、A で発生した負圧は @ の領域に成長してきている。

 

更に、流速を 5m/s にした場合である。この時の流速は既に @ が最速となっている。

静圧分布を見ると、負圧は @ の領域を占領している。クルマで言うなら正にグラウンド・エフェクトが

効いている状態である。つまり、東海大の先生は正しい説明をしていたと言えるだろう。

 

このように流入する流速が変ると、モデル内における静圧分布や流速分布が変る事が解る。

つまり、流れの状態を決める要因は物体の形状や寸法だけではないのだ。だから最初に「モデルの寸法や

流速に結果が依存する」と言ったのだ。もしモデルの形状が変れば、このような分布の変化は、別な流入条件で

現れる。圧力分布が流入条件に依存する理由は、慣性力を流体の粘性力で割った係数、つまりレイノルズ数

異なるためだ。(圧縮性流体とか非圧縮性流体といった概念は全く関係がない)

 

 

 このように、初期条件に大きく結果が左右される空力の実験は、実験施設の条件が大切だという事も容易に

理解できる。空缶を刳り貫いて、線香を入れたところで空力現象らしいものが見づらいのは当前であろう。

 また扇風機というのも曲者である。つまりプロペラから発生する風は、回転軸回りに螺旋を描く「つむじ風」

なので、空力現象を可視化することを阻んでいる。現実の風洞施設では、プロペラの螺旋流を直進流に直すのに

とても手の込んだ対策を施している。(少年少女諸君! このような事情であるから「空力の実験」と称して

タバコを買ってきたり、火遊びは絶対にしないように!)

 

 となると、このコーナーで扱う車両の解析事例が 50 m/s(180 km/h)である事に留意して結果を評価する

必要がある。因みに、山海堂出版の「F1 mODELinG」に記事を載せている矢口昌義氏の事例は、

83.33m/s(300 km/h)における解析結果と聞いているから、このコーナーでの結果を比較して、「どちらが

正しい」とか、「どちらが正確」などと論じるのは的が外れている。

                                        (Fulcrum 著)