センターウィングの結果 2

 

 この前の解析では、半身モデルによる左右対称(直進時)の結果のため、3条件の違いが見えにくかった。

そこで、車体の斜め前から風が当たる非対称な条件を試みた。

 

 

上図のモデルで解析したところ、考えてみれば当たり前なのかもしれないが、今まで見逃していた側面が

明らかになった。

 

 上の静圧分布図を見ると、モノコックの陰になるアウト側では、イン側と比較してサイド・ポンツーン入口の

ラム圧 注)が多少なりと低くなっている。ラム圧が下がるとラジエーターにおける熱交換の効率が下がる。

つまり熱的に厳しい。

 ところがチムニー付近では、逆にアウト側の方がイン側よりも負圧が大きい。とすればクーリング・エアーを

押す力が弱いならば、逆に引き抜くしかないだろう。

 今回も僅かではあったが、センター・ウィングの効能を匂わせる結果を得た。

 

 

「無し」に比べて僅かではあるが、BAR型の場合、負圧領域は、背が低く、加えて横に張り出している。

 

Mclaren型は、他の二つに比べて顕著な違いを見せる。多分、エンジンの熱対策を第一に考えたのは Mclaren

であると予想する。ベリリュウム合金が禁止になって以降、メルセデスのエンジンは精彩を欠くが、2005年も

エンジンのスタミナに自信がないのかもしれない。

 

 この解析を通じて、センター・ウィングの主たる働きは、ダウン・フォース獲得よりは整流であり、しいて

言えば、高速コーナーにおけるアウト側バンクの熱対策ではないかとの予想を更に深めたくなる。

                                   (Fulcrum 著)

 

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ラム圧

 前方からのドラッグによって加圧される吸気孔での圧力をラム圧と言う。超音速機のジェット・エンジンは、

圧縮比がさほど高くないが、何故あのような高出力を発揮するするかといえば、ラム圧が加わるので燃焼室の

内圧は、黙っていてもバカ高いのだ。

 実はレース・カーのインダクション・ボックスとはラム圧を有効に使う手段なので、自然吸気エンジンとは

言っても走行中はテスト・ベンチと異なり、事実上、過給状態で使用されている。そのためスペック上の

排気量よりも多くの空気を燃焼している。