ラジエーター・ダクトとチムニーの考察
「マシンに纏わりつく静圧分布の全容」の項で、サイド・ポンツーンにおける静圧分布を示した。
その時の図を下に示す。
上図の解析モデルにおけるサイド・ポンツーンは、モデリングの作業性を優先したため Juguar R2 注)を
参考にしたので、ラジエーター・ダクトが後方に伸びて、最終的にサイド・ポンツーン上面に排出している。
これを見て解るように、ラジエーター・ダクト内は強い正圧が陣取っている。ということは、ダクト内は
言ってみれば目詰まり状態である。恐らくエンジンの冷却には、少なからず影を落としているはずだ。
ところでサイド・ポンツーンの上面には水色の領域がある。つまり負圧が発生しているので、ここには
リフト・フォースが働くから一見厄介ではある。しかしラジエーター・ダクトに縦穴を掘ってチムニーを
設置したら、熱膨張したダクト内の空気は、ストレス無く車外に排出されるのではないか?
その証拠に4強のマシーンに見るチムニーの位置は、上図の負圧領域と見事に一致するのが面白い。
2004年は 1レース/1エンジン となり、金土日を一つのエンジンで闘わなくてはならなかったし、
2005年は 2レース/1エンジン となった。エンジンを高熱のストレスから如何に守るかが鍵となる以上、
当然の事としてラジエーター・ダクトのチムニーに求められる役割も、以前に増して大きくなってきたと
考える。 (Fulcrum 著)
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注)ジャガーは、現在のレッドブルの前身なのだが、当時は想像がつかないほど低迷する弱小チームだった。
テクニカル・ディレクターがシーズン中に変り、異なる設計思想の駄作を別なデザイナーが手を入れた、
スタッフにとってもドライバーにとっても扱い辛いマシーンだった。不良中年ことエディ・アーバインが
ドライバーだった時に、クルマを口汚く酷評して歩いたのが一因で、チーム全体のモチベーションも
低かった。しかし Juguar R2 をサンプルにすれば「ここが悪い!」とはっきり解る結果が期待できた。
対してフェラーリは非の打ち所が無くて、レポートのネタに事欠いた事情がある。