フォーミュラー・カーの空力解析

 

 2002年6月に、当サイトBBSにフロント・ウイングについての質問が舞い込んだ。 要約すると、

 「トヨタのマシン(TF−102)は、あのフロントウイングだとマシンの下に(ノーズの下からすり板にかけて)空気が

流れないんじゃないですか? 」

 

  早速これについて調べてみると、ザウバーの2001年型と2002年型が、トヨタと同じく中央に瘤が付いたFウィングである。

ジャガーもしかり。 興味深い点は、ザウバーもジャガーも世に言う貧乏チームで、自前の風洞施設を抱えていない。

そのため、かなりの水準の事もCFD(流体解析)に頼っているようだ。

 

ノーマルなフロント・ウィングの代表例

  

                                               F1-2000 (上)  AP-04 (下)

 

三つ瘤型フロント・ウィングの代表例

 

 巷に出回る自動車雑誌でも時たま扱うテーマではあるが、それらのほとんどが空気の流路についての図示に留まり、

車体近傍における圧力分布を扱うものは少ないのが現状である。ダウン・フォースにしてもドラッグにしても、圧力分布に

功罪があるのだから、この点に注目すべきであろう。ところが当時、どの専門誌を見ても、欲しい資料が手に入らなかった。

そこで、筆者自身が解析計算を試み、検討してみた。

(Fulcrum 著)


2020/12月 追記

 この記事を書いたのは、確か 2003年 だったか 2004年 だったと思う。その当時、ある程度(廉価版)の
流体解析ソフトとしては「定常解析」がやっとだった。それでも「風の流れを可視化出来た」という事は、
言ってみれば「鰻にありつけなくとも、醤油だれの香りは嗅げた」と喜んだものである。
 だが、原因と最終結果のみを論じ、可逆的な相関関係が保障されているとする「ニュートンの物理学」では、
時間的な変化(バネに物を吊るすとフニャフニャする過程など)は扱えない。「ニュートンの物理学」 というのが、
前出の「定常問題(解析)」の範疇なのだが、「流体の振る舞い」を扱うならば少なくとも「時間項」は必須であろう。
要するに目に見える現象で言えば「カルマン渦(はためく旗など)」等の再現は正しく「非定常問題」である。
2020年の常識(見識)からすれば、ここに書いた記事の結果は「正しい物理現象を表す結果」とは言きれない。
 ただし一方で、発熱と放熱を追跡するだけならば、熱の収支は帳尻が合う事が多く、使い方によっては
「熱流体の定常解析は不適当(不正確)」と全てを切って捨てた物でもない。(場面によっては、簡便で有効な手段である)

 何にせよ、非定常解析に漕ぎ出そうとするならば、材料の物性値や各種パラメータが、どこにも公表されてはいない事が多く、
「非定常解析ソフトさえ有れば、直ちに諸現象を把握できる」というものではないので、まだまだ、奥が深く、今すぐ手の届く
ソリューションではないのである。